2019.07.05 校長室より

テファリキ(Te Whariki)…あるいはリスクを取る能力

敢えて恥をさらしますが、私はつい最近になるまで、「テファリキ」について何も知りませんでした。

ニュージーランドで保育士をされている方が講師を務める研修会に参加しました。
会場に入った時、プロジェクターの画面にはいくつもの項目が並んでいました。
「免許取得の方法」や「免許更新について」など、NZでの保育士の資格に関するものが多く並んでいました。
幼児教育と小学校教育との連続性について何か得る所があればと思って参加していた私は、正直困惑していました。周りは幼児教育の関係者ばかりでしたから。

講師の先生は「自己紹介がてら、画面のどの話を聞きたいかおっしゃってください」とリクエストしました。するとどの参加者も押しなべて、一番上に書かれている「テファリキとラーニングストーリー」を選ばれました。私の困惑は、私を押し潰さんばかりです。「そんなことも知らないでここに居るんですか?」という声が、聞こえてくるようでした。自分の番になって立ち上がった私は、嫌な汗をかきながら「何も分からないので勉強させてください」と言って座りました。

では…とご説明を受けた「テファリキ」の魅力に、正直言って圧倒されました。この考え方を国を挙げて遵守しようとしているNZという国は、すごい国だと思います。

「テファリキ」の意味は「編み込みマット」です。糸が縦横に積み重なってマットになるように、

1. Empowerment(活性)
2. Holistic Development(包括的発達)
3. Family and Community(家族と地域)
4. Relationships(つながり)

という4つの大きな糸となる観点で、こどもたちを包み込みます。

そしてそこには5つの編み込み糸としてのチェックポイントがあって、それは

1) Well being(心身の健康)
2) Belonging(所属)
3) Contribution(貢献)
4) Communication(コミュニケーション)
5) Exploration(探究心)

の5項目です。子どもたちの成長を計る時に、これらの点がどのレベルまで伸長しているのかを見ます。

大事なのは、何歳なんだから、ここまで来ているべきだという指標があるのではなく、あくまでもひとりひとりの子ども中心に「先月までここまで来ていたのが、今日はここまで来ています」と記録されます。

その記録が「ラーニングストーリー」でした。「テファリキ」と「ラーニングストーリー」はリンクしていて、どの項目のどのチェックポイントで観察されたレポートなのかが分かるようにしてあります。

それがまとめられて保護者に届けられます。写真と一緒のレポートです。我々の言葉だと「通知表」あるいは「ポートフォリオ」でしょう。

例えば、「Well being」のチェックポイントには「Knowledge about how to keep themselves safe from harm and the ability to take risks.」(自分自身を安全に保つための知識とリスクを取る能力)とあります。実は、このひと言に、私は感銘を受けたのです。

心身の健康を保つためには「自分自身を安全に保つ知識」だけが必要なのではなく、「リスクを取る」能力を身に付けていなければならないのです。

子ども中心と言えば、NZの小学校は、5歳の誕生日翌日から小学生だそうです。だから「入学式はない」のです。

日本の教育が、「みんなで一緒に」から「それぞれの個性を活かして」という方向にスライドしているとしたら、考えるところの大きいとても示唆的なものでした。

まだまだこれから色々なことを学んでいかなければならないと思った1日でした。

(「テファリキ」の解釈は主観的なものです。ご批正ください)